「カンボジアと日本の医療」を救うアウトバウンド型医療輸出
「『日本の病院、丸ごと輸出ではない』北原グループの医療輸出①」で、日本の医療を新興国・医療途上国に輸出しても意味がないというお話をしました。
では、どうやって国際展開していくか。その方法がアウトバウンド型の医療輸出です。この方法はタイやシンガポールなどが行っているインバウンド型の医療輸出、いわゆるメディカルツーリズムと対極の方法であり、日本初の施策です。
医療格差を拡げるメディカルツーリズム
メディカルツーリズムはベトナムやシンガポール、最近は日本でも一部、行われている新興国、途上国の富裕層を自国に呼び込み高額な医療を提供するビジネスモデルです。北原グループの理事長 北原茂実は「メディカルツーリズムは、提供する国も提供される国も医療格差を広げる危険性をはらんでいる」と考えています。
メディカルツーリズムが何を引き起こすかは、タイとカンボジアの状況を見れば明らかです。実際、カンボジアでは、病気になった富裕層は高額の医療費を支払いタイやシンガポールに医療渡航しています。一方、お金のない人達は、国立病院の前で医療を受けられずに死んでいるのです。カンボジアでは年間30万人が国外で医療を受けており、富裕層が病気になると、本来、カンボジア国内で使われるはずの医療費が国外に流出してしまっています。つまり、タイがメディカルツーリズムを展開したことで、カンボジアの医療の発展が妨げられているのです。また、その影響はタイ国内にも出ており、高給を支払うバンコク病院には優秀な医療者が集まっています。逆にいうと、バンコク病院グループ以外の病院の医療者の質は低い状況です。タイ国内でも高額な医療を提供するバンコクホスピタルを受診できる人は一部の富裕層のみで、95%のタイ国民がかかる病院の医療者の質は落ち適切な医療が受けられない状態なのです。