『医療者のあるべき姿』

北原国際病院では、カンボジアの新病院設立に向けてカンボジア人研修生を受け入れています。カンボジア人研修生たちが5月に研修にきてから、早くも5ヶ月が経過しました。現在、30名が院内各部署にて研修していますが、病院スタッフも患者さんも、カンボジアからの研修生が来ている事にだいぶ慣れてきた様子が伺えます。
最近では「とても丁寧に接してくれた」「慣れない日本での研修を日本語で一生懸命頑張っている」と患者さんから声をかけて頂ける事も増え、研修生にとっても医療者としてのやりがいを感じるようになってきたのではないかと思います。

北原国際病院では、日本特有の「思いやりの医療」を学ぶ事を目的とし研修を行っています。その研修の一つに毎週月曜日、院長の岡田先生による朝礼を行っていますが、研修生だけでなく、研修生の指導者も対象となっています。
朝礼の内容は至ってシンプル。「現状に満足しない事」「自己満足ではなく『患者さんが満足する』事を常に心がける事」など、道徳的な内容が中心です。

先日の朝礼で、岡田院長より「医療が赤い十字架の印を使用する理由」についてのお話がありました。諸説あるようですが、昔、巡礼者を協会が迎え入れケアをした事が医療やホスピタリティの基本となったとの事。

「医療者が知識や技術を向上する必要あるのは自分の為ではなく、患者さんに対するホスピタリティーを向上するためである」

研修生の顔つきや行動が変わってきたのは、このような医療の基本が少しずつ浸透してきたからだと感じています。また岡田先生からのお話は、研修生だけでなく、指導者となる私たち日本人スタッフにとっても、初心を振り返るよい刺激となっています。

カンボジアは内戦による知識人の虐殺により、どの分野にも若い人の目標となるロールモデルとなる人物が少ない状況です。医療分野も同様で、カンボジア国内ではそのような人と出会える若者は多くありません。

研修生にとって「こんな医療者になりたい!」と背中を追ってもらえるよう、わたし達日本人スタッフにとっても試練の時です。
カンボジア人研修生が日本にいられる期間は限られています。カンボジアで日本と同じような医療が提供できるよう、日本人スタッフも研修生と共に成長していきたいと思います。