カンボジア・プロジェクトを東京から後方支援する西牟田敬美さんにお話を伺った。KNIへの入職のきっかけ、日々の業務、3月にカンボジア・スタディツアーを企画、同行して感じたプロジェクトへの熱い想いを語っていただいた。
(聞き手:NGO日本医療開発機構 個人会員 清水 眞理子)
――入職のきっかけからお聞かせください。
西牟田:東日本大震災直後、私は本当に何をしたいのか分らないまま普通の大学生と同じように就職活動していたのですが、大学4年時の7月、八王子で北原理事長の講演を聴き、衝撃を受けました。講演会後の懇親会にも出席し理事長と直接お話をして、「私が求めていたのはこれだ」と思いました。同席していた経営企画室長も八王子まちづくり事業の担当者も北原国際病院に対する想いが強く、一緒に仕事をしてみたいと思うような方々ばかりでした。「北原先生はどういう方ですか」と尋ねると、「愛がある人です」と一言。部下からそう言われる人はなかなかいない、そういう人の元で働けたらなと思い、応募しました。
――それで採用試験を受けたのですね。
西牟田:①エントリーシートと小論文を提出、②室長の面接、③理事長面接という流れでした。最後の理事長面接では、覚悟のほどを試されました。自分の想いは全部素直に伝えられて悔いはありませんでしたが、だめかなと思っていただけに、採用通知をいただいた時はとても嬉しくその場で入職を決めました。
――そして新人研修が始まって。
西牟田:はい、経営企画室では、内定をいただいた翌月からインターンとして勤務していたので、特に「研修」というものはなく、仕事をしながら仕事を覚えていくという形だったのですが、当院伝統の施設課研修では朝5時から正面玄関の雑巾がけ、ソファのシミ抜き、花壇の手入れなど、患者さまに気持ち良く過ごしていただくための方法を学びました。そのおかげで施設を大事にすること、この環境を維持するためにどれだけの配慮がいるかがわかりました。
――ここの病院は磨きあげられているという印象があります。他の病院でよく見る所どころはがれた廊下の道案内テープもなく、スタッフが困っている患者さんによく声掛けしています。
西牟田:そこは私たちが自慢できるところです。私も普段患者さまと接する機会は少ないですが、病棟などでは気持ちよくご挨拶するようにしています。
――現在の業務内容を教えてください。
西牟田:メインは理事長の秘書業務になりますが、事務局としては、会員さまからのお問い合わせの対応、講演会の準備などを行います。3月にはカンボジア・スタディツアーを企画、同行しました。
――カンボジアの医療事情をみてどういうふうに感じましたか?
西牟田:途上国の医療に関心がある医学部、薬学部の学生さんたちと一緒に、日本では過去の話となった感染症が蔓延する医療現場、古い医療機器、環境整備が不十分な中でのオペを実際に見学しました。日本人スタッフ、ボランティアで来ているアメリカ人医師はよく動くのに、カンボジア人は携帯電話をいじっていたりお喋りしたり、手術後の患者さんのケアよりアルバイト優先だったりと、よく話には聞いていた現実を目の当たりにして驚きました。でもカンボジア人の中にも現在カンボジアの医療の課題を感じ、私たちに協力してくださる方も増えてきていると聞いています。草の根活動にはなりますが、一般市民の方にも私たちの理念や活動の意味を伝え、一人でも多くの方に理解していただきたいと思います。また文化的背景の違いを考慮して、日本のやり方をただ押し付けるだけではいけないですし、かといって単なる施しになってはいけない。お互いにとって最善の支援の方法は何か、事務局としても日々模索しています。
――現在NGO会員さまの状況はどうですか。
西牟田:アベノミクスで医療の海外展開への関心が高まってきたため、ありがたいことに法人会員さまが増えています。理事長の講演会・現地報告会は定期的に開催しますし、グローバル・フェスタや八王子いちょうまつりなどのイベントにも参加します。これから更に多くの方に私たちの活動を知っていただき、賛同してくださる方を増やしたい。そのために私たちの活動をもっと発信し、私たちと会員さま、会員さま同志の交流が深まる場を提供したいと思います。
――最後にみなさんの強みは何ですか?
西牟田:最近多くの方が当法人を見学に来てくださるのですが、「スタッフみなさん楽しそうに働いていますね」とよく言われます。経営企画室には、ソーシャルワーカー、音楽療法士、青年海外協力隊員でアフリカ経験者もいます。カンボジア駐在スタッフは医療のプロとして治療にあたりながら、養成校での講義、広報活動、政府との折衝、大きな夢を描いています。いろんなバックグラウンドのスタッフが力を結集して、専門外のことにもチャレンジして結果を出す。それこそが私たちの強みであり、原動力だと思います。