カンボジア国内から変える「カンボジアのリハビリテーション医療」 ~ 第4回 <前編> ~

今回は、KNIグループのカンボジアでの大きな活動の1つである「カンボジア人理学療法士の教育」について紹介したいと思います。

カンボジアには現在、十分な教育体制が整っていません。
その大きな理由の1つが70年代後半の知識人大虐殺によるものです。そして、教育体制が破綻して適切な教育を受けることができなかった当時の子どもたちが大人になり、今、教育を行う立場になってきています。しかし、誰もがどのようにして教育を行っていけばよいか分からないといった現状が、カンボジアの教育現場にある最大の問題になっています。

現在、カンボジアの理学療法養成校は首都プノンペンにあるTechnical School for Medical Care(TSMC)1校のみです。この学校は、元々カンボジアにあった学校を1987年にJICAが支援して新しく設立したもので、毎年30~40名の理学療法士を輩出しています。
TSMCの教育カリキュラムはJICAや外国の団体が一緒に作成したようで、十分な教育を受けているような印象を受けます。しかし、教師や生徒からのヒアリングによると、実際には行われていない授業も多いそうです。
何故、そのようなことが起こってしまうのか?
理由は講義を行える学校の正規教員が少なく、講義のほとんどを外部講師に依頼していること。さらに、外部講師が行っている講義の内容を把握している学校職員がいないからだそうです。

また、学校を出て病院で働く卒業生の多くは、第2回<前編>でお話したマッサージに近い徒手的治療を使う「キネシオセラピスト」です。彼らは現在の理学療法士のようなカリキュラムを教育がされていないため、ちゃんとした卒後教育ができません。その影響なのか、どのような症例に対しても臥位でのストレッチやマッサージしか治療方法を選択できない理学療法士がたくさんいます。せっかく学校で学んできた知識も、職場で使うことなく忘れていってしまう・・・。もったいない限りです。(第4回<後編>へつづく)

★こちらの記事は『現役理学療法士による、理学療法士を目指す人のための情報サイト「POST」』にも掲載されました。