医療に値段をつける!?

はじめまして。まる子と申します。医療の海外進出プロジェクトに関わって6年目になります。

自己紹介はおいおい少しずつさせていただくとして。。。早速本題に入りたいと思います!

今回は、私が今まで経験した中でも最も難しく、濃密で、そして最高に面白かった仕事の一つである、中国・上海での仕事についてお話します。

 

私が上海にある邦人向けクリニックのマネジメントを担当することになったのは、2008年のことです。

私たちは2007年に上海に進出し、その運営はカンボジアでの調査事業が本格化する2011年まで続きました。

その時なぜ我々が上海での病院経営に乗り出したのか、ということはまた別の機会にお話するとして、今日は日本と海外の病院経営の違いに触れたいと思います。

海外での病院経営、日本での病院経営、いったい何が違うのでしょうか。

違いはたくさんありますが、大きなもののひとつに「誰が値段を決めるのか」ということがあります。

つまり、日本では一律で診療報酬点数が決まっているのに対し、上海では医療の提供者、つまり私たちが自らの医療行為に値段をつけなければならない、ということです。

日本の病院でしか働いたことのない人間にとっては新鮮であり、またとても難しい仕事でもありました。

 

私は上海に赴任した当初、財務諸表も読めなければマネジメントの勉強などしたこともない、経営ド素人の20代の小娘(?)でした(「もしドラ」は読みましたが)。

赴任してしばらくは色々なことを覚えるのに忙しかったのもあり、以前からの値段設定を継続していましたが、次第にそのままではいけないことに気づきました。

経営を黒字化する為には、患者の数を増やすと同時に単価を調整しなければならない。

日本の感覚で、診療報酬改訂という国のお沙汰を待っていてはビジネスにならないのです。

まずはじめに、上海市内にいくつもある他の邦人向けクリニックのホームページを調べたり電話をかけたりして、値段を調査しました。

その時は細かいところまでは調査できなかったのですが、初診料・再診料の情報を集めたところ、私たちのクリニックは上海の邦人向けクリニックのなかでも一番安い層に属するということが分かりました。

ウチは派手さはないけれども働いている人は最高にフレンドリーだし、高級感よりも親しみやすさを売りにするんだから手頃な値段設定でいいのよ!という気持ちも多少あったのですが、患者さんたちに納得していただくためにも、その価格が適正なものなのかを知る必要があると感じ、私はめでたくこの時から、「マーケティング」という新しい世界に足を踏み入れることになったのです。

毎晩のように日本人の集まる飲み会に出席し(注:あくまでもマーケティングです)、今まで上海でどんな病気に罹ったか、その時どのクリニックに行ったのか、どんなクリニックだったら安心できるか等々、日本人居住者の様々な生の声を集めました。

その中で、意外にも値段に対するプライオリティが低いことが分かったのです。

「値段は全く気にならないから、良いサービスを受けたい」

「日本人の優秀な医師が診てくれて、日本語の通じる親切なスタッフがいれば値段はいくらでもいい」

という声ばかりが集まりました。

何故でしょうか?安心はお金に換えられないから?それとも、日本人駐在員はお金持ちだからでしょうか?

【海外プロジェクトブログその1】