今、なぜ医療の国際展開が必要なのか
2020年、団塊世代のボリュームゾーン240万人が70歳を迎えます。このとき、大学を卒業して新社会人となる若者は120万人しかいません。出生率が大幅に回復する材料も見当たらず、医療技術の進歩などによって平均寿命は延びていく。どう考えても、このままでは財源不足により日本の医療は成り立たなくなってしまいます。
北原グループは医療を総合生活産業と捉えることで日本の医療破綻を回避することが出来ると考えています。医療の産業化の一つとして、日本の医療輸出も行っています。北原グループは日本初のアウトバウンド型医療輸出を行い、「医療途上国の医療」と「日本の医療」どちらも救うことを目指しています。
実は「日本の病院丸ごと輸出」ではない北原グループの国際展開
医療格差を拡げるメディカルツーリズム
メディカルツーリズムはベトナムやシンガポール、最近は日本でも一部、行われている新興国、途上国の富裕層を自国に呼び込み高額な医療を提供するビジネスモデルです。北原グループの理事長 北原茂実は「メディカルツーリズムは、提供する国も提供される国も医療格差を広げる危険性をはらんでいる」と考えています。
メディカルツーリズムが何を引き起こすかは、タイとカンボジアの状況を見れば明らかです。実際、カンボジアでは、病気になった富裕層は高額の医療費を支払いタイやシンガポールに医療渡航しています。一方、お金のない人達は、国立病院の前で医療を受けられずに死んでいるのです。カンボジアでは年間30万人が国外で医療を受けており、富裕層が病気になると、本来、カンボジア国内で使われるはずの医療費が国外に流出してしまっています。つまり、タイがメディカルツーリズムを展開したことで、カンボジアの医療の発展が妨げられているのです。また、その影響はタイ国内にも出ており、高給を支払うバンコク病院には優秀な医療者が集まっています。逆にいうと、バンコク病院グループ以外の病院の医療者の質は低い状況です。タイ国内でも高額な医療を提供するバンコクホスピタルを受診できる人は一部の富裕層のみで、95%のタイ国民がかかる病院の医療者の質は落ち適切な医療が受けられない状態なのです。
「医療途上国の医療」と「日本の医療」どちらも救うアウトバウンド型医療輸出
北原は医療の輸出はインバウンド型のメディカルツーリズムではなくアウトバウンド型であるべきだと考え、実際にカンボジアで進めています。アウトバウンド型の医療輸出とは、現地に入り込み、教育システム、ITシステム、建築、食の流通など医療に関わる全てのものをその国に適切な形で再構築し、公平な医療提供システムを持った地産地消の医療を作り出すことを目的としています。2016年10月に開院したカンボジアの病院「サンライズジャパンホスピタル」が行っている医療はまさにアウトバウンド型の医療輸出であり、目指しているのは医療の発展と人材教育で、医療を通じた社会開発である。
リバースイノベーションによる日本医療の革新も
医療の国際展開はそれだけでは、終わりません。途上国などで新しく開発した医療システムやサービスを将来、日本に逆輸入し、日本の医療をよりよいものに革新する。いわゆるリバースイノベーションの可能性を秘めています。何故なら、現在の日本では、医療に対する規制が多く新しい事に挑戦することすら出来ないからです。病院は営利事業を行うことも禁止されているため、市場競争が起きず、成長性のない閉塞的な状況にあります。カンボジアのように医療制度の縛りのない途上国では、日本では行う事のできない新しいシステム、サービスの開発に積極的に挑戦することが出来るのです。新しいシステムやアイデアを生み出し、それを日本に逆輸入し、日本の医療をよりよいものに変える。医療の国際展開は多くの可能性を秘めています。