NGO 日本医療開発機構 リハビリの軌跡

NGO日本医療開発機構はカンボジア国立コサマック病院で医療支援活動を行っています。
今回は当団体のリハビリテーション分野における活動について紹介します。
 
脳外科病棟にリハビリテーションの概念が存在しない
私たちが活動を開始した当初、脳外科病棟にはリハビリテーションという概念が根付いていませんでした。院内にリハビリテーション科はあり、理学療法士も病院内で勤務していましたが、脳外科病棟には配置されておりませんでした。脳損傷後、脊髄損傷後の患者様に対してのリハビリテーションも提供していません。退院される患者様、家族は障害について理解できていないだけでなく、どのように介助したら良いか、どのように身体を管理した方が良いのか、全くわからない状態で退院されていきました。
 
脳外科病棟にリハビリテーションを根付かせる
①リハビリテーションの提供 (医師、看護師との情報共有)
最初に脳外科病棟の患者様に対してリハビリテーションを提供しながら、それと同時に病院内のスタッフにリハビリテーションの重要性を伝えていきました。徐々に医師、看護師とはコミュニケーションがとれて情報を共有できるようになりました。しかし、リハビリテーションスタッフは脳外科病棟に配置されず、私たちの直接的な医療支援が無ければリハビリテーションの提供は難しい状態でした。
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②リハビリテーションスタッフの教育
そこで2014年12月からリハビリテーション提供のシステム作りを開始しました。リハビリテーションスタッフが脳外科病棟に配置されない原因は、部署や病棟間の連携・信頼不足が背景にありました。脳外科病棟の医師たちは、カンボジア人リハビリテーションスタッフを信頼しておらず、リハビリテーション科にオーダーを出していませんでした。その課題を解決するため、私たちはコサマック病院のリハビリテーションスタッフへ脳外科病棟患者のリハビリテーションについての教育を行いました。座学で必要な知識を学び、臨床を通して実際の臨床能力を育成しました。カンボジア人リハビリテーションスタッフがリハビリテーションを実施し、患者様が改善すると脳外科病棟の医師もカンボジア人リハビリテーションスタッフを少しずつ信頼してくれるようになり、リハビリテーション科にオーダーしてくれるようになりました。リハビリテーションスタッフへのオーダーが病棟に新たなシステムとして導入され始めました。
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③サービス提供システムの見直し
しかし、この流れも短期間で継続が難しくなってしまいした。この背景には料金システムに原因がありました。脳外科病棟以外の部署では患者様からリハビリテーション料を頂いてサービスを提供しておりました。脳外科病棟だけは、リハビリテーションサービスを開始した直後ということもあり、無償でのサービス提供となっていました。これによりリハビリテーションスタッフの意欲は下がり、徐々に脳外科病棟に来なくなってしまっていました。
 
そこで病院長に私たちの活動を報告した上で、リハビリテーションスタッフの脳外科病棟への介入について依頼しました。
 
その後は他部署同様のシステムにて、リハビリテーションを提供できるようになりました。現在は定期的にリハビリテーションスタッフが脳外科病棟に配置されリハビリテーションを提供できる体制が整ってきました。
 
私たちが目指す持続可能なシステムに向けて少しずつですが、動きつつあります。私たちの活動に興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡ください。