カンボジア国内から変える「カンボジアのリハビリテーション医療」 ~ 第1回 ~

初めまして、カンボジアでKitahara Japan Clinicを運営しています理学療法士の亀田です。

現在、カンボジアの医療をよくするために、「途上国へリハビリ道具を届けませんか?」プロジェクトに協力させていただいています。

この「途上国へリハビリ道具を届けませんか?」プロジェクトの最終目標は途上国現地の人達が自分達の手で適切なリハビリ道具を作れるようになることですが、まずはカンボジアに日本の脳卒中用装具を持ち込み、日本のリハビリ道具の質の高さを認知してもらうところから始めています。またリハビリ道具に限らず、カンボジアの医療をよくするためのアイデアをPOSTを通して募りたいと思っています。

皆さんによいアイデアを考えていただくために、まずはカンボジアの医療の現状を8回に分けて紹介していきます。

今回は自己紹介代わりに私が所属しているKNIグループのプロジェクトをご紹介します。私が所属しているKNIグループは、2012年にカンボジアのプノンペンにKitahara Japan Clinicを開設しました。このクリニックでは脳卒中に対するリハビリテーションを主なサービスとして提供しています。また同年にNGO 日本医療開発機構の活動としてカンボジアの医療スタッフ、学生を対象とした教育活動、貧困層への医療支援を開始しています。

カンボジアは70年代後半のポル・ポト政権時代に医師、教師、法律家などの知識人が大量に殺されたという、世界でも稀に見る悲惨な歴史を持つ国です。その後内戦が続いたこともあり、今でも医療従事者の教育が不十分な状態です。現在すごい勢いで経済が発展しているカンボジアですが、医療は発展から取り残されています。そのため、医療レベルはASEAN諸国の中でも著しく低く、カンボジア国民もカンボジアの医療を信用していません。私がカンボジアで活動している間にも、日本ではコメディカルでさえ知っているような医療知識を医師が知らないという場面を何度も見ており、現地の医療のレベルの低さを感じました。

お金を持っている富裕層のカンボジア人は、高品質な医療を受けるためにシンガポール、タイ、ベトナムなどの近隣国に高いお金を払って渡航します。しかし貧しい人達はカンボジアで医療を受けるしかなく、基本的な治療もままならない、そんな状況です。また大量虐殺の影響で国民の平均年齢が20代後半と若く、これまで脳卒中になる方が少なかったことが関係しているのか、特に脳卒中後のリハビリテーションに対する認識が低く、富裕層、貧困層に関わらず、脳卒中発症後に満足なリハビリテーションを受けることができず、寝たきりになってしまうケースが多く見られます。

KNIグループは2009年からカンボジアに入り、2015年に他日本企業と合同で日本式の救急病院を設立し、高品質な医療サービスの提供と同時に、カンボジアの人材教育を行うことを予定しています。

救急病院はプライベート病院です。そのため運営を継続するには、現状の仕組みのままでは治療費の支払い能力がある方しか診ることができません。そこでNGO日本医療開発機構では、貧困層の患者さんに対して医療を提供する仕組みを考えています。

私が運営しているKitahara Japan Clinicの役割の1つは、救急救命センターが完成する前にカンボジアの方々に脳卒中の治療、特に脳卒中後のリハビリテーションの重要性を認識してもらうことです。クリニックでは脳卒中を主な対象としたリハビリテーション、医師の遠隔診療、看護相談、訪問事業、日本への医療渡航のアシストといった様々なサービスを提供しています。受診される患者さんは富裕層から中流層で、リハビリテーションを受ける目的は8割が脳卒中など中枢神経疾患、残り2割は腰痛や肩関節周囲炎などの整形疾患です。中枢神経疾患の患者さんはほとんどが外国に医療渡航して帰国した患者さんです。中枢神経系の患者さんに関しては、ほぼ全ての患者さんが週3回~5回の高頻度なリピーターになっています。このことからも、カンボジアで適切な中枢神経系リハビリテーションが求められていることが分かります。

今後もカンボジアの人達に脳卒中後のリハビリテーションの必要性を広めるべく頑張っていきたいですね。(第2回<前編>へつづく)クリニックでの臨床風景★こちらの記事は『現役理学療法士による、理学療法士を目指す人のための情報サイト「POST」』にも掲載されました。